福を招く縁起の良い日本の伝統文様|和柄

和柄 ことばから日本を知る

レトロでかわいい和柄に込められた意味を知ろう

着物や器、建築物、生活雑貨や印刷物に至るまで、あらゆる場面で使われている、和柄と呼ばれる日本の伝統文様。
これらの和柄には、良きことを願う吉祥文様が数多くあり、結婚祝いや記念日のプレゼントなど、おめでたい場面でもよく使われます。
普段目にする和柄の意味や由来を知り、大切な人へのプレゼントに想いを込めたり、また縁起の良い和柄を普段の生活にも取り入れてみてください。

豊富な種類の和柄の中から厳選して7つをご紹介していきます。

七宝(しっぽう)

七宝

輪が交差し上下左右と四方につながってゆく連続文様を七宝つなぎと言います。
四方どちらへも永遠に続き無限に広がる様子から、子孫繁栄、円満、調和、ご縁などの願いが込められた、縁起の良い吉祥の文様とされています。

七宝の呼び名の由来については、「四方(しほう)」の読みが、江戸時代に「七宝(しっぽう)」へ変化したと言われています。
古くは「輪違い」と呼ばれていたようです。

仏教における七宝とは尊い七つの宝石のことで、

  • 瑠璃(るり/ラピスラズリ)
  • 玻璃(はり/水晶)
  • 珊瑚(さんご)
  • 瑪瑙(めのう)
  • 硨磲(しゃこ)

の七つを意味します。

中心に花を据える「花七宝」、重なる円弧の部分に小円を重ねる「星七宝」など色々な組み合わせの文様があります。

輪が繋がる様子から人との調和や子孫繁栄を願うこの柄は、結婚にはもちろん、新しい生活が始まる節目の贈りものにぴったりです。

 

麻の葉(あさのは)

麻の葉

正六角形を規則的に繰り返して配置した幾何学文様。
植物の麻の葉の形を文様化したものです。
古来から「麻」は神事に用いられていて、麻の葉の成長が早くまっすぐに伸びることから、健やかな成長への祈りが込められた模様で、昔は子供の産着などによく使われていたようです。
また、六角形は六芒星と同じく、魔を除ける力があるともいわれています。

観世水文(かんぜみずもん)

かんぜみずもん

流水文様の中でも特に有名な文様で、室町時代の能楽の家元、観世太夫が定紋として使用した格調ある文様。
京都、観世家の屋敷跡である観世稲荷社の傍らには、観世家の人々が水を汲んでいたとされる「観世井」、「観世水」と呼ばれる井戸があります。
この井戸には龍が降りてきたという伝承が残されていて、水面が常に動揺し波紋を描いているので、これを図案化し「観世水」の紋様ができたと言われています。

ことわざの「流れる水は腐らず」の通り、流れている水はいつも清らかで、常に変わりゆく無限の象徴、未来永劫を表します。

市松(いちまつ)

市松文様

シンプルな模様ながら、上下左右にどこまでも繋がっていることから子孫繁栄や商売繁盛などの縁起の意味が、また護身法である九字切りの形と同じことから魔除けの力があるといわれています。

2020年に大ヒットしたアニメ「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎が緑と黒の市松模様の羽織を着ていたことで「タンジロー柄」と呼ばれました。

この文様、江戸中期の頃、歌舞伎役者の佐野川市松(1722-1762)が白と紺の正方形を交互に配したこの文様の袴を着ていたことから「市松」の名がつき、大流行となった伝統柄です。
もともとは「石畳文様」や「霰(あられ)文様」と呼ばれ、古くは古墳時代の埴輪の模様や、法隆寺や正倉院の染織品にも見られます。
平安時代にはお公家様の衣装の地紋に使われた格調高い模様だったそうです。

この模様はご存知の通り、日本だけではなく世界中にお馴染みの柄で、英語ではチェス板に例えられ「チェック柄」と呼ぶことから勝負運に通じるとされている。

 

矢絣(やがすり) / 矢羽根(やばね)

矢絣

矢絣は弓矢の羽を縦に並べた古典的なデザインの文様です。
矢は「的を射る」ということから、古くから縁起の良い柄として使われてきました。

江戸時代、射った矢は戻ってこないことから、嫁入りの際に矢羽根柄の着物を持たせ、「出戻らない」という意味で縁起柄とされました。
また「戻らない」という意味だけでなく「まっすぐに進む」という意味も込められていると言います。
また「破魔矢」のように邪気を払う意味も込められているようです。

1970年代後半にヒットした少女漫画「はいからさんが通る」の主人公・紅緒が女学生時代に矢羽根の着物に海老茶色の袴を着ていたことから、現代では卒業式の袴が定番となり、着物の柄も大正ロマン漂う女学生のようなスタイルの矢羽根柄が人気のようです。

 

青海波(せいがいは)

青海波

幾重もの半円を連続して、波を表した幾何学文様で、古代ペルシャで考案され、シルクロードを経て日本へと伝えられたといわれています。

古くから吉事に用いられていたようです。
海の恵みと大海原の穏やかな無限の広がりをあらわすとして、末永く穏やかな暮らしが続くようにという願いがこめられています。

雅楽「青海波」がその名前の由来とされ、青海波を舞う人はこの文様の装束を身に付けています。
「源氏物語」には、光源氏が青海波を舞う場面が描かれているようです。

 

唐草(からくさ)

唐草

優美な曲線を描いて伸び、四方八方に力強く広がってゆく蔓の文様。
古代エジプトで生まれ、ヨーロッパやアジアに広がったデザインです。
四方に延びていく様子が力強い生命力を思わせることから、子孫繁栄や長寿の意味を持つ縁起の良い吉祥文様とされています。

泥棒のイラストは決まって盗んだものを唐草文様の風呂敷に包んで逃げていますが、それは昔どの家に盗みに入っても、必ず唐草の風呂敷があったからだそうで、それほどポピュラーな柄だったそうです。

 

菱紋(ひしもん)

菱紋

菱形が規則的に並んだ連続文様。古くは縄文土器や飛鳥奈良時代の織物の地紋に見られる文様です。
一年草である水辺植物の「ヒシ」の葉や実に由来した模様で、ヒシは繁殖力が強いことから子孫繁栄、無病息災などの意味が込められています。

二重三重にして繋ぎ合わせた「入子菱」や、花を菱型に組み合わせた「花菱」、4つ組み合わせて作る「割菱」などバリエーションも豊富で、家紋にも多く使われました。

 

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