日本には雨をあらわす様々な呼び名があります。
普段使われない呼び名も多いので、知らない言葉がたくさん出てくると思います。
雨の降る日に、雨の呼び名を眺め美しい日本語に触れてみてください。
ゆったりとした時間とともに、表現の幅を広げてくれるかもしれません。
季節を感じる雨の呼び名
雨の呼び名|春の雨
雪解雨(ゆきげあめ)
冬に積もった雪を溶かすように降る雨。「雪消しの雨」とも。
雨が上がると雪の下に隠れていたかわいい新芽が姿をあらわし、春の訪れを告げてくれるという嬉しい雨です。
寒明の雨(かんあけのあめ)
立春を過ぎた頃に降る雨のこと。「寒明」は春の季語。
この頃の雨はまだ雪や氷まじりで、春の雨にはまだ遠い雨のことをいいます。
花の雨(はなのあめ)・花雨(かう)
桜の咲く頃に降る雨、または咲き満ちる桜の花に降る雨。春の季語(晩春)。
桜雨(さくらあめ)
桜が咲く頃に降る雨。「桜流し」とも言います。
春雨(はるさめ)
細かくしとしとと長く降り続く春の雨。春の季語。
春時雨(はるしぐれ)
突然降ったり止んだり、断続的に降る春の雨。春の季語。
立春(毎年2月4日頃)から桜が咲く前まで。
桜が咲く頃の時雨は「花時雨」と言います。
春霖(しゅんりん)
春の初めに降り続く雨。春の季語。
霖は「ながあめ」と読み、3日以上降り続く雨のことを言います。
彼岸時化(ひがんじけ)
春のお彼岸の日に降る長雨。
四温の雨 (しおんのあめ)
春先の三寒四温の、暖かな四温のときに降る雨。
”三寒四温”は、寒い日が3日続くとその後暖かい日が4日続くこと。
菜種梅雨(なたねつゆ)
菜の花が咲いている3月下旬から4月上旬頃に降り続く雨のこと。
愉英雨(ゆえいう)
春に咲く花々を愉しませる雨のこと。「英」は花の意味。
ひと雨ごとに喜びの花を咲かせる、植物にとっての恵みの雨という意味。
養花雨(ようかう)
花の成長を促す雨。
育花雨(いくかう)とも言い換えます。春の季語。
木の芽雨(このめあめ)
木の芽の成長を促す雨。
催花雨(さいかう)
早く咲けと花をせきたてるように降る春の雨のこと。春の季語。
膏雨(こうう)
春に降る雨の中でも、こまやかに降りつづく雨のこと。春の季語。
小糠雨(こぬかあめ)
春に降る霧状の細かい雨。
山蒸(やまうむし)
春先の木々の芽吹きをうながす霧や雨。中国地方山間部の言葉。
穀雨(こくう)
春の最後の二十四節気。4月20日頃から立夏の前までの期間に、たくさんの穀物をうるおす春の雨。
雨香(うこう)
時々微かな花の香りが添えられた、雨の始まりのにおいのこと。
雨東風(あめごち)
春から夏にかけて吹く東寄りの風。
東風は春風の総称。氷を解き、春を告げる風。
”東風吹けば雨”ということわざがある通り、雨を伴うことが多い。
雨の呼び名|夏の雨
翠雨(すいう)
初夏、新緑の季節に降る雨のこと。夏の季語。
同じ意味で”緑雨(りょくう)”や”若葉雨(わかばあめ)”ともいいます。
俄雨(にわかあめ)
急に降り、すぐ止む雨。ひとしきり激しく降り、やんではまた降る
同じ意味として、「通り雨(とおりあめ)」、「驟雨(しゅうう)」、「繁雨(しばあめ)」、「村雨(むらさめ)」などがあります。
白雨(はくう)
明るい空から降る雨。にわか雨のこと。
夕立(ゆうだち)
夏の夕方に降る急な雨。雷を伴うことが多く、弱く降っても、強く降っても夕立といいます。夏に限って使われます。
肘笠雨(ひじかさあめ)
にわか雨のこと。
雨が急に降り出し、笠の用意もなく、または笠をかぶる暇もなく、肘を頭上にあげて袖を笠の代わりにすることから名付けられました。
喜雨(きう)
日照り続きのあとに降る恵みの雨のこと。夏の季語。
私雨(わたくしあめ)
ある限られた地域だけに降るにわか雨、特に下は晴れているのに山の上だけに降る雨をいいます。
旱魃(かんばつ)のときなどには、その地域だけが潤うので「外持雨(ほまちあめ)」とも。
五月雨(さみだれ・さつきあめ)
梅雨の頃に降る長雨のこと。
”五月”は旧暦の5月のこと。現代の太陽暦では6~7月上旬に当たります。
梅雨のことをあらわすこともあります。
梅雨(ばいう・つゆ)
6月から7月にかけて降る長雨やその時節のこと。
「梅雨」と書くのは、梅の実が熟すころに降る雨のため。
催涙雨(さいるいう)
7月7日に降る雨。七夕しか会うことの出来ない織姫と彦星が、雨で天の川を渡れなくなり、流す哀しみの涙になぞらえているとされています。
俄雨(にわかあめ)
急にふりだし、短時間降ったあと急にやむ雨。または雨の強さが急に大きくかわる雨。
通り雨(とおりあめ)
ひとしきり降ってすぐに上がる雨。
にわか雨との違いは、一日に何度か降ったり止んだりを繰り返す可能性がある状態を「通り雨」といいます。
驟雨(しゅうう)
対流性の雲ー積雲(せきうん)と積乱雲(せきらんうん)ーから降る突然の雨。
「にわか雨」「通り雨」とも「驟雨(しゅうう)」の範疇に入ります。
村雨(むらさめ)
激しい雨と弱い雨を繰り返す通り雨のことを意味する言葉。
にわか雨に似た意味ですが、雨が強まったり弱まったりと雨の強さにフォーカスしたのが村雨。
「群れた雨」の意味であり、群雨、叢雨とも書きます。夏の季語。
”村雨”は日本刀の名前でも有名。
雨休み(あめやすみ)
日照りの続いた後の雨を、一日田畑の仕事を休んで祝うこと。
同じ意味で、雨祝、喜雨休み、雨降り盆があります。
雨の呼び名|秋の雨
秋雨 (あきさめ・しゅうう )
秋に降る冷たい感じの雨。秋雨前線の影響で長期間にわたり降り続くことも多いため、「秋の長雨」「すすき梅雨」と呼ばれることも。
秋霖(しゅうりん)
秋の初めに降りつづく雨。秋の長雨。 秋雨 。秋の季語。
秋黴雨(あきついり)
梅雨のように降り続く秋の雨。秋の季語。
霧雨(きりさめ)
霧のような細かい雨。水滴の直径0.5ミリ未満をいい、低い層雲から降る雨のこと。秋の季語。
春におこる霧は霞、小糠雨などといいます。
秋驟雨 (あきしゅうう)
秋の季節のにわか雨。
雨の呼び名|冬の雨
時雨(しぐれ)
秋の終わりから冬の初めにかけて降ったり止んだりする小雨。冬の季語。
片時雨(かたしぐれ)
空の一方では時雨(しぐれ)が降りながら、一方では晴れていること。冬の季語。
小夜時雨(さよしぐれ)
夜に降る、降ったり止んだりする雨のこと。冬の季語。
寒の雨(かんのあめ)
寒の内[寒の入である”小寒(1/5頃)”から”立春(2/4頃)”の前日まで)]に降る冷たい雨のこと。冷え込み がきつくなれば、雪に変わる雨でもあります。
ちなみに寒の入り(1/5頃)から9日目に降る雨を寒九の雨と呼び、昔から「寒九の雨は豊作のしるし」と言われていたそうです。
鬼洗い(おにあらい)
大晦日に降る雨のこと。
雨の景色や雨の音、雨の強さをあらわす言葉
雨音 (あまおと)
雨の降る音。
雨景色 (あまげしき)
雨の降っている風景。
雨上がり(あめあがり)
雨が上がった直後のこと。雨開、雨後 ともいいます。
遣らずの雨(やらずのあめ)
帰ろうとする人を引き止めるかのように降る雨のこと。
天泣(てんきゅう)
晴れているのに雨が降ってくる時、天が泣くとの表現から。
同じように晴れているのに雨が降ることを一般的に「天気雨」と言います。
関西では「狐の嫁入り」とも呼ばれています。まるで狐に化かされている現象だとの意味合いのようです。
飛雨(ひう)
風に飛ばされながら降る激しい雨。
涙雨(なみだあめ)
悲しみの涙が化して降ったと思われる、ほんの少し降る雨。
漫ろ雨(そぞろあめ)
小降りだけど、いつまでも止まずに降る雨。
黒雨(こくう)
空が暗くなるような大雨。どしゃぶりの雨。
ゲリラ豪雨 (げりらごうう)
局地的大雨のこと。和名は鬼雨(きう)ともいいます。
どこでおこるかわからないこと から”ゲリラ豪雨”と言われる。 「ゲリラ」と は,「敵の後方や敵中を奇襲して混乱させる 小部隊。 遊撃隊」
雨礫(あめつぶて)
小石が飛んでくるように、降りかかる大粒の雨のこと。
雨勝ち(あめがち)
雨降りの日が多いこと。
雨の糸 (あめのいと)
節をなして降る雨を、糸に見立てていうことば。
雨夜の星 (あまよのほし)
雨の晩の星。
めったに見られないことのたとえとして使われます。
雨のありがたみを表すことば
恵みの雨(めぐみのあめ)
日照り続きのときに降り、農作物をうるおす雨。 ”恵雨”とも呼びます。
雨露の恵み(うろのめぐみ)
自然の雨や露が与える暖かい恵み。
慈雨(じう)
万物を潤し育てる雨という意味。また、日照り続きの時に降る恵みの雨。夏の季語。
”恵みの雨”と意味は同じですが、「慈」の文字のおかげで、自然への敬意をより強く表わすことができます。
甘露の雨(かんろのあめ) / 甘雨(かんう)
天の恵みの雨。 草木のうるおいとなる雨。
「甘」の字が、草木が喜ぶものであることを印象づけています。草木にやさしく降りそそぐ、春の雨のこと。 慈雨。
瑞雨(ずいう)
穀物の生長を助ける雨。慈雨。
社翁の雨(しゃおうのあめ)
春のお祭りの日に神さまが降らせるという雨。社翁は土地の神さまのこと。
好雨(こうう)
好い雨。ちょうどよく降る雨のこと。
順雨(じゅんう)
季節にしたがって順調に降る雨のこと。
雨祝い(あまいわい)
日照り続きの時に、雨が降って仕事を休んでする祝い。
干天の慈雨(かんてんのじう)
日照り続きの時に降る恵みの雨のこと。
その意味が転じて、「困難な時に待ち望んでいたような助けに恵まれること」を指す言葉として使われます。
干天の慈雨は、アニメ『鬼滅の刃』にも出てきた言葉なので聞いたことがあるかもしれません。主人公・竈門炭治郎が使った水の呼吸・伍ノ型の名前で、辛い状況の時の苦しみから解放する技として使われていました。
雨は花の父母
花は雨の恵みによって咲くことから、雨は花を育てる両親のようなものだという意味のことわざ。
雨の降る音、オノマトペ
ぽつぽつ
雨の降り始め。雨のしずくがものに当たった音。
ぱらぱら
少し降り方が強まり、雨粒が木の葉やものに当たる音。
しとしと
弱い雨が連続的降る音。
ざぁざぁ
雨脚が強まり、たくさんの雨粒が地面や屋根に当たる音。
どしゃどしゃ
地面にできた水たまりに雨粒が衝突して出す音。
まとめ
調べ始めるとまだまだ載せきれないほど多い雨の呼び名、その一部をご紹介いたしました。
自然の様々な姿を愛で、豊かな感性を育んできた日本人ならではの表現力なのではないでしょうか。